[1]榑ヶ畑道(往復)

60 霊仙山(多賀町)

経塚山 1040m
  霊仙山 1084m
 最高峰1098m

伊吹山と対峙する鈴鹿の名山

霊仙山遠景(男鬼武奈林道より)

歩行時間  4:45  
総時間  6:00  
山行調査日 10/5/5
難易 A  安全  B  体力  B  展望  A
地形図  霊仙・彦根東
問合先  米原町役場
留意点  山頂部の爽快感は別格。養鱒場バス停から歩くと
      1時間かかる。

南北六十キロに及ぶ鈴鹿山地の数ある山の中で霊仙山は最大級の山域を持った山である。美濃の山地に近い鈴鹿の北端にあって、周辺に南霊山・阿弥陀峰・谷山・ソノド等の衛星峰を配し、山頂台地に三角点峰・最高点峰・経塚山等のビークを連ねた山容は、北に対峙する伊吹山にも遜色のない存在で、鈴鹿北部で展望のきくどの山からも、南北に長い堂々とした巨体を見ることが出来る。雪の季節には人を寄せつけない厳しい山も、丸みのある峰々が緑の笹に覆われる頃に訪ねると、樹木のない山頂部は、ピークと鞍部の織り成す稜線が、波打つ大海原を彷彿とさせ、まさに勇壮である。霊仙山への登山道も数多いが、本項では車でアプローチして最も近くて歩き易い博ヶ畑から、往復するコースを歩いた。
国道21号沿いの醒ヶ井駅から、南に折れて県道を山手に向い、醒ヶ井養鮮場から更に地道を3キロ程走った所の駐車場から、すぐ脇の登山口へ入る。蒼とした植林の下を、細い沢に沿って掘れた山道を登るうちに榑ヶ畑の廃村跡に出る。壊れた家と石垣に往時を偲びながら通り過ぎると、『かなや』の表札を掛けた山小屋の脇に、水に浸した飲料缶を無人販売している。家の先から右に折れて高度を上げるうちに『汗拭峠』の分岐に着く。河内風穴へ直進して降る道を分け、左折して登り道をとると、この辺りから二次林の爽やかな尾根上の快適な溝道となる。4合目の小札を過ぎ一歩きして5合目に出ると、脇には『見晴台』の標示があり、小さな窓から、長浜市街とその上に琵琶湖と湖北の山並みが覗く空地があり、休憩に良い場所である。5合目を過ぎると、これ迄の穏やかな遊歩道風の山道は、一転して小岩の多い急登道に変る。固定ロープを頼りに息を切らして登るうちに、周囲の潅木は疎らになり、振り返ると湖東平野の低い山塊が見えてくる。やがて山頂の稜線が見え始め、樹木がきれて明るい空の下に出ると、急に視界が変って、芒洋として遮るもののない笹原と、遠く琵琶湖や山並の光景が拡がり、これ迄の疲れも忘れて、歓声をあげたくなる一瞬である。山頂部に出て一息入れた後、北のピーク経塚山へ向って笹の切開道を歩き、山砂の柔らかい道を緩く登るうちに、鳥居の立つ『お虎ヶ池』に出る。琵琶湖形と言われる水面に、土筆の様な穂先を出す水草を眺めた後、先へ出て程なく経塚山に着く。北霊仙とも呼ばれる山頂は、笹の薄い裸地に、白い露岩が一面に散在する異様な光景を見せ、四周に雄大な展望を拡げている。経塚山から霊仙山(三角点峰)に向って、笹原に線を描く踏み跡を降り、鞍部から緩く登って山頂に着く。同じ様な裸地と石灰岩の中に、倒れかけた標識が幾つも並んで雑然としているが、経塚山同様に展望が四周に拡がり、経塚山で隠れていた南霊山方向の景観が雄大である。霊仙山から経塚山へ戻る途中に、最高点峰へ向う分岐がある。背の高い笹の切開き道が山頂迄続き、角度を変えて大展望が拡がっている。30分程の距離で往復出来るので時間と余力があれば是非立寄ってみたい。
帰路は来た道を忠実に辿って駐車場に戻る。山頂部から5合目迄は、帰路は足場の悪い急降下になるので、登り以上に慎重さを要するが、山頂部の爽快感は鈴鹿第一であろう。