はじめに


2003(平成15)9月に出版しました「地図で歩く鈴鹿の山ハイキング100選」に続いて「ハイキングマップで歩く鈴鹿の山万能ガイド』と題する鈴鹿案内書を、今般中日新聞社より出版させていただきました。「鈴鹿の山歩き」を主題として、六十歳から始めて七十歳を迎えるまで、区切りの良い十年間をその案内書作りに取り組んで参りましたが、「地図で歩く鈴鹿の山』に先立って制作しました私家版「鈴鹿の山ハイキング』も加えた三冊を、陸上競技の三段跳びのように、一つの目標に向かって同じ視線や構想を保ちながら、少しずつ自力で山を歩く技術や能力を上達させつつ完成できましたことは、多くの先輩や仲間の方々のサポートをいただいて成し得たことと厚く感謝しております。ところでこれまでの巻頭文でも触れましたが、当シリーズに共通する制作意図は「行動・目的・選択等の多様化する中で、鈴鹿山地の山歩きを志向するすべての愛好者に役立つ案内書」を作ることでしたが、それは登山家とか岳人に値する経験も技術もなく、中高年になった五十歳を過ぎてから、人に誘われて始めた自分自身にとっても、鈴鹿歩きを永く続けるために必要な発想でした。ところが前述した山歩きの多様性に、私自身の高齢化もあってか、もう一つ「体力」の多様性が加わりました。人は皆高齢化に伴って、山歩きに必要な持続力・集中力・心肺力・脚力といった身体機能が衰えてきますが、山の会の仲間を見ても、七十歳を過ぎると会を離れて行く人が急速に増えていくようです。個人差は仕方ないとしても、自然を満喫したいという意欲がありながら、

それができなくなるのは残念なことです。そこで本書では、従来の総花的に山頂を踏破する紹介を改め、内容は別途の解説欄に譲りますが、次のような五部構成にして、初級者から上級者まで、そして若年者から高齢者まで、誰でもが鈴鹿歩き(山と山麓)に利用できる案内書をめざしました。

第一部 鈴鹿五十名山を歩く(鈴鹿の名山と代表コース)

第二部 三角点の山巡り(三角点一覧表と精選コース)

第三部 三百山ピークハント(三百山一覧表と精選コース)

第四部 東海自然歩道10コース(鈴鹿の範囲を分割紹介)

第五部 鈴鹿山麓てくてく旅(見どころ・古道などを紹介)

本書の主題名を「鈴鹿の山万能ガイド」としましたが、前書『地図で歩く鈴鹿の山」とは姉妹本とも言うべき表裏一体の作品で、二冊を合わせて収録した山は二百四十を超え、残るは一部の低山やバリエーションルートのみで、主だった山とハイキングコースはすべて網羅しました。従って今後は私自身もフィールドノートから解放されて、楽しくそして自由に、鈴鹿山地を新しい思索や手法をもって、ハイキングしたいと思っています。

 

平成十八年夏  西内正弘