鎌ヶ岳へ登る湯ノ山からの一般道は、武平峠と雲母峰の間に6本のルートがある。中でも三つ口谷と長石尾根は、登山口が互いに近いので周回に好都合で、谷道と尾根道の、違った変化が楽しめて人気が高い。三つ口谷は源頭部のガレ歩きを敬遠して、途中から尾根に出る方法もあるが、谷筋を最後まで詰めるのも、展望の良さに報われるルートである。
湯ノ山温泉街を抜けて最奥の駐車場から歩き始める。三滝川沿いを歩き、二つ目の堰堤先から分岐を左折して、谷を二度渡った後、小尾根を越えて左から流れ込む三つ口谷へ入る。左岸沿いの踏み跡は、岩棚を越える細道になって最初から緊張するが、堰堤の先へ出ると歩き易い谷沿い道になる。暫く遡行すると大滝の前に出て、すぐ手前の急斜面を急登するが、もう少し戻って「回り道」の標示のある涸れ沢から登るほうが、安全で時間もかからない。滝の高巻きから一度沢に降り、再び岩壁や小滝を右から巻いて沢に戻ると、長石尾根との分岐に出る。尾根に登らず沢通しで山頂に向かうと、二次林の拡がる平坦地から山肌が迫るV字状に変わり、次第に山間が開いて、樹木の疎らな明るいガレ地になる。正面に岩肌の鋭い峰が現れ、峰に向かって踏み跡を辿るうちに、御在所岳方向の展望が拡がってくる。岩峰の下で右に回り込み、谷縁のガレ地を登り詰めると、武平峠からの県境稜線に出る。左折して崩壊地と鎖場を越えて鎌ヶ岳山頂に着く。
帰路は長石尾根をとり、鎖場の手前から東の尾根へ、木の枝や笹を掴んで急降下する。尾根が平坦になった大岩の脇から、ガレに沿った山腹の踏み跡を急降下してザレ場に出て、三つ口谷へ降る分岐の先で、尾根筋を離れて右へ回り込み、長石谷へ降る分岐を過ぎて尾根に戻る。(この辺りはテープや黄色のペンキマークも多い)その先で尾根が分岐する所はいずれも左をとり、鞍部を過ぎて登りに変わると、急に松の木が目立つ岩尾根になる。脆い岩に注意して登りきると、樹木の途切れた正面に、御在所岳とスカイラインが迫るガレの上に出て、その先で「弥一ヶ岳」の山頂となる。標示もなく知らずに通り過ぎそうな山頂(松の古木がある)から、東へ降る尾根に入ると、西側と同様に、岩の間を抜けたり木の枝を掴むヤセ尾根となるが、一本道で解り易く、電柱の立つ脇を3度過ぎると、山腹に入って植林下の穏やかな道になる。谷道に合流して左折すると、すぐに鉄橋を渡って車道に出る。左折して五分程舗装路を緩く登って駐車場に着く。