昔の八風街道は、県境の八風峠を越えて東西の八風谷を通ったもので、現在でもこの間は歩くしか方法はない。しかしこの由緒ある街道も、東西に離れすぎるので一度に歩くのは難しい。そこで三重県鋼は別途に歩き、本項で滋賀県側のルートを紹介した。帰路にとった中峠からカシラコ谷は、往時もバイパス路として利用されたらしいが、谷沿いに明瞭な踏み跡がないので、慣れない人は往路の八風谷を戻ったほうが無難である。
県境の石榑峠と神崎橋のほぼ中間の、八風谷林道入口近くの空き地に駐車して歩き始める。堰堤前の橋を渡ると、すぐに施錠されたゲート前に出る。脇を抜けて十分程舗装路を歩き、左手の八風峠の道標を見て林下に入り、支流と本流を渡って右岸に出る。近くに本州製紙の造林小屋が建つ所である。右折すると谷沿いに明瞭な踏み跡があり、堰堤を二つ越えて仙谷の分岐を過ぎると、笹の深い二次林下の涸れ沢道になる。谷は核心部になって大岩が敷き詰まり、沢に寄って岩棚をへつるような道になる。道標のある支沢に出た所で、渡渉して土手を越えると、谷沿いから植林下に入るが、踏み跡が薄くなって道が解りにくくなる。テープを目印にして両側が溝地の小高い所を過ぎると、踏み跡が明瞭になり、幅の広い古い道に出る。源流が近づくと水が消えて岩ガレの溝地になり、急登するうちに笹地になって県境稜線に出る。左折して笹の切り開きから、砂ザレの崩壊地を登ると、石柱の立つ三池岳に着く。三角点は更に東へ五分程の所にある。四周に展望の開く稜線上の山頂から、来た道を戻り八風谷の分岐を過ぎると、すぐ先で八風峠に出る。広い砂地に八風大明神の石碑と鳥居が立つ峠から、稜線を直進して中峠に向かう。伊勢平野の展望が拡がるガレ地や草地を抜けると、木と笹の深い、切り開きを降った鞍部で中峠に着く。右折して稜線を離れ、笹を分けて降るうちに、溝地に水が流れてカシラコ谷沿いになる。谷沿いに踏み跡が無いので、ルートを読みながら、谷の淵や谷中の石を踏んで降って行く。それでも岩壁や小滝には巻き道があり、左岸の植林下へ入るとすぐに、道標のある広い河原に出る。渡渉して谷を離れ、北へ向かって植林下へ入ると、踏み跡が薄くなるが、テープ目印を参考にして、窪地を登ると造成中の林道が接続している小尾根に出る。すぐに林道へ出ても良いが、更に北へ降ると、小沢沿いに踏み跡がある。そのまま歩くと堰堤の前で林道に出るが、途中にも林道の近づく所があり、どちらかで林道へ出て駐車地へ戻る。