塔尾金明神の山宮参拝

86 お金明神(永源寺町)

天狗の面の磐座参拝行

お金明神の磐座
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永源寺ダム沿いの佐目集落に、若宮八幡神社があり、境内の一画には「塔尾金明神」が合祀されている。その塔尾金明神には、集落の里宮と共に、山中にも山宮があって、御神体とされる磐座は、巨大な岩を積み重ねた、天狗の面をした奇岩であると言う。但しその所在地は、佐目集落から佐目子谷を遡行し、更に東の愛知川近くへ降った山中深くにあって、容易に日帰り出来ない遠くにある。その様な経緯と、幾度も探索して訪ね当てた状況が、西尾寿一氏の「鈴鹿の山と谷」に記されているが、先人の苦闘も、一度その道筋が公にされると、一変してごく普通に訪ねられるようになる。皮肉なことに、本元の佐目集落から入るのは明らかに不利で、三重県側の朝明から峠越えをすると、二時間程の距離である。

国道から朝明渓谷に入り、バス停前の駐車場から歩き始める。羽鳥峰峠へ向かう手前の分岐から中峠道へ入り、峠から笹の切り開きを降って「大瀞橋」に着く。橋を慎重に渡り、右折して川沿いの登山道を歩き、四つ目の岩の多い谷が「お金谷」で、渡った先の窯跡のある広場から谷沿い道に入る。明瞭な踏み跡から左へ渡渉の後、右へ渡り返すと道は少しずつ谷を離れ、岩が増えて踏み跡が消える辺りから、山腹を北へ登ると原生林の古木が現れ、小尾根の下から巨大な岩の間を抜けて上に出ると、右手の岩が「お金明神(お金の塔)」である。付近一帯が塔尾金明神の神域である標示も立てられている。見る角度によって、天狗の面に見えるお金明神を参拝の後、小尾根の鞍部から左の山腹へ入り、登り詰めた所がお金峠で、峠から谷状のガレ地を降り、溝地が拡がって平坦になった所で、北へ歩くと支流が合流する谷尻谷へ着く。この場所はコリカキ場と呼ばれ、佐目からの参詣者が、汗を流して身を清める「禊ぎ場」で、形の良い小滝と滝壺がある。

帰路はオゾ谷に向かって上谷尻谷を遡行する。谷沿いに道はないが、二次林下は何処でも歩けるので、昔の鉱山採掘の遺構らしい、錆びた鉄材を見ながら上流に向かい、幾度か渡渉の後、谷がほぼ直角に曲がる所で左手のワサビ谷へ入り、涸れ沢を急登してワサビ峠に出る。東の展望が開く峠から、左へ回りながら急降下し、谷の源頭から広いオゾ谷に出る。谷沿いから谷を離れて左岸の巻き道に出て、鉱山採掘跡の石垣を過ぎると、すぐに愛知川沿いの分岐に出る。右折して良く踏まれた登山道から河原に出て、渡渉した所から根の平峠に向かう道となる。根の平峠から駐車場迄は、幾度か紹介した道で解り易い。