昭和初期発行の「近畿の山と谷」に、「天狗岳の山裾にひらけた君ヶ畑」という記述があり、現在の天狗堂が、端正な山容と展望の良さで、古くから知られた山であることが伺える。但し天狗堂へのアプローチは、八風街道沿いの政所から御池川上流の君ヶ畑集落まで、距離が長いので車利用でないと大変である。紹介するコース設定は、君ヶ畑から更にニキロ程先の、岩尾谷から南東尾根を登り、山頂から東へ降る尾根の周回で、前者は全般に踏み跡が明瞭で解り易く、多分天狗堂の最短ルート。後者は踏み跡は殆ど無く、地図読みが必要な山慣れた人向きのルートで、自信のない時は前者の往復でも勿論構わない。
君ヶ畑から奥へ走り、橋(紅峠橋)を過ぎた辺りから左手を注意していると、すぐに「天狗堂登山口」の標識と、数台が置ける駐車地が現れる。尚車が多い時は、更に奥のノタノ坂分岐地点に広い駐車地があり、その場合は登山口迄二十分程戻る。車道から植林下の踏み跡に入り、右手の谷沿いから、山腹へ移ってジグザグと急登しながら支尾根に出る。尾根の両側で樹齢の異なる植林下を、更に急登を続けて主尾根に出て、平坦で歩き易い二次林の尾根が山腹に変わると、石灰岩が増えてきて、大岩の左右を巻きながら急登して、宮坂峠からの踏み跡に合流する。右折するとすぐに南峰から天狗堂の山頂に着く。
大岩の上に立つと、御池岳から藤原岳を中心に、雄大な展望の開く山頂から、東へ延びる尾根を帰路にとり、大岩の右から低い岩を越えて東へ出て、シャクナゲの群生を避け、右へ回り込んで尾根に出る。尾根上にもシャクナゲや捻れた潅木が茂って歩きにくいが、足元を選んで左右を巻きながら降り、植林下に入ると下草のない歩き易い尾根道になる。尾根を南東へ一直線に降った後、分岐を左へ曲がる所で、踏み跡が薄く若木の植林にも塞がれて、右の尾根に入り易い。ここは左の尾根端が植林に覆われた所で、左へ回り込んで降ると、歩き易い正しい尾根に入る。そこを過ぎると、分岐はあるが迷い易い所はなく、所々で潅木や雑草が茂る藪分けもあるが、降るうちに道が尾根縁に現れ、尾根の突端部に出る。鞍部の所には左右に古い道形があり、右折して山腹を降ると車道に出る。右折して車道を一歩きして駐車地へ戻る。広い駐車地へ戻る時は、左折して数分で戻れる。尚尾根の突端から左折すると、広い駐車地近くへ出ると聞いたが、御池川を渡渉するので、雨後で増水している時等は要注意である。