御池岳北端の鈴北岳から、西へ延びる尾根が鈴ヶ岳から茶野へと降っている。茶野は草原に石灰岩と潅木が点在し、四周に大展望の拡がる景勝地で、大君ヶ畑から短時間で歩ける尾根もある。茶野から桜峠とミノガ峠を経て、大見晴と万野の尾根を周回するコースは、所々で踏み跡が消えて読図力を要求されるが、犬上川源流域を代表する山々を巡る、歩きがいのある山旅である。
多賀町と藤原町を結ぶ国道の中程に、大君ヶ畑の集落がある。山深い僻地であるが、今も三十軒程の民家が軒を並べ、神社やバス停もある。そのバス停から五分程東に、登山届箱が立ち、脇の山側から茶野へ向かう山道が延びている。杉木立と畑の間を抜けると植林下に入り、溝道から尾根に乗ると、尾根上にも良い踏み跡が続いている。やがて道が山腹沿いに変わり、正面の小山を右折すると主尾根に出る。この後山頂迄は、踏み跡のない尾根を、倒木や集中する石灰岩を避けながら足元を選んで急登し、カヤトの草原から山腹を越えて茶野の山頂に着く。山頂から戻る様にして右へ回り込み、南東の尾根に乗った後、鉄塔が立つ鞍部の桜峠から、鈴ヶ岳へ向かう稜線を離れて、巡視路標示を右折して山腹へ降る。桧の若木が並ぶ細い山腹から尾根に出ると、傾斜部に階段を付けた歩き易い巡視路になり、鉄塔の脇を三回過ぎて崖下に林道が現れた所で、急な階段を降って林道に出てミノガ峠に着く。
峠の北側から踏み跡へ入ると、大見晴へ向かう平坦な尾根になるが、少し歩くと尾根も踏み跡も消えてしまうので、左右の谷地に注意して植林下を進み、左手に現れる尾根に乗る。後は一本道で鞍部へ急降下し、急登に変わるとブッシュの藪漕ぎになるが、藪と植林の境を選んで登り詰めて大見晴の山頂に着く。石灰岩が集中して休む場所も無いが、潅木の上から東の展望が開いている。大見晴から万野へ向かう道も、踏み跡が無くて解りにくいが、山頂から植林下へ入った後、北へ緩く降り、右へ寄りながら小ピークに出た所で、左折して尾根縁に沿って登ると、樹林の中の万野に着く。山頂から北西に降って鉄塔下に出て、右折すると階段の付いた山腹の巡視路になるが、土砂に埋もれて足場が悪いうえに、谷側が急崖なので充分に注意する。山腹からT字路に出て、左折すると植林下の降りとなり、ジグザグに降って小沢に出た後、すぐに地道の林道に着く。林道から人家の建つ舗装路に入り、国道に出ると駐車地迄僅かである。