本書は誰でも楽しく安全に歩いて頂けるために、危険過ぎたり長距離過ぎたり複雑過ぎるルートは除外している。本項で紹介したルートも、雨引山から平尾を結ぶ間が、かなり複雑なので除外すべきかと迷ったが、初めて登場する山でもあり、例えコースを外れても、低山なので短時間で降れるし、周囲には林道も通っている。となれば地図読み、ルート読みの良い教材になる、という理由で取り上げることにした。両山とも歩く人も稀な里山であるが、平尾は「戦国時代の昔は砦を築いて物見をした」とのことで、それを裏付けるように、山頂部に立つと石水渓方向の展望が開く場所がある。
駐車地は明星ヶ岳と同じで、明星橋を渡ってY字路を左折し、数軒の家を過ぎると薄暗い植林下となり、橋から五分程の、緩い登りが平坦になった所で、右手の植林に入る。両側の谷地を避けて山腹高所へ登るうちに尾根に出て、解り易い尾根道になる。松の木や手入れしてない植林下の、ヤセた岩尾根を登降するうちに雨引山に着く。
展望のない山頂から少し戻り、分岐から北西の尾根に入って平尾に向かう。細い尾根は次第に荒れてきて、崩壊したりキレット状の山腹を巻いたりするが、右手に分岐の尾根が現れた所で、直進する尾根を離れて北の尾根へ右折する。登降しながら尾根道を降るうちに、地形が複雑になり、左の尾根に登る鞍部で、尾根を離れて右手の踏み跡へ入る。道はすぐに両側の尾根に挟まれた谷地を抜け、山腹から一旦尾根へ出た後、再び尾根を離れて山腹を通り、右手から降りてきた尾根に出て左折すると、小ピークを過ぎた先で平尾に着く。尚地図を見ると、直進して平尾に近い所に出る尾根もある。この尾根が楽に歩けると、かなりの時間短縮になると思うが未踏である。
山頂から北西に少し歩いて突端に出ると、石水渓方向の山並みや車道が見える展望台がある。このコース唯一の展望を楽しんだ後、引き返して右折し、南西の尾根を帰路にとって降る。細い尾根の突端に出て左折し、松の古木が立つ所から植林下の尾根を急降下する。滑りやすい砂土に注意して降るうちに、尾根が判然としなくなり、右手に細い谷が見えてくるので、谷へ降りて水流のない掘り割りのような谷中を下流へ歩く。所々に倒木が谷を塞いでいるが、やがて右手に巻き道が現れ、谷を離れて植林下に入るとすぐに前田川の前に出て、笹藪を分けて石橋を渡って林道に出る。左折して簡易舗装の道を一歩きして駐車地へ戻る。