[1]ホタガ谷道(往復)

11 竜ヶ岳 1099m(大安町)

笹原に大展望の拡がる名峰

竜ヶ岳(大安町両ヶ池より)
歩行時間  4:50  
総時間  6:30  
山行調査日 10/12/17
難易 B  安全  C 体力  C  展望  A
地形図 竜ヶ岳
問合先 大安町役場
留意点  谷道は意外に悪路で足元注意。 笹原に出ると気
      分爽快になる。
鈴鹿山脈の中央からやや北寄りで、藤原岳と釈迦ヶ岳の間にあって、北の治田峠から南の石榑峠に山域が及ぶ巨大な山が竜ヶ岳である。『竜』と名の付く山は、竜神を祀って雨乞をした故事に由来するものが多いが、竜ヶ岳も例外ではなさそうである。霊仙山や雨乞岳の山頂部と同様に、緩やかな稜線に茫洋とした笹原が拡がり、ハイキングの醍醐味を感じさせる、鈴鹿でも1級の山であるが、山頂部迄の道のりは、山が大きいのでどの道も長丁場となるうえに、紹介する基本コースの『ホタガ谷道』でさえも、安全で歩き易い山道に終始している訳ではなく、悪路や危険な箇所が多いので、十分な慎重さが必要である。
三重県北部の大安町に入ると、どの道にもしっかりと道標が出てくる『宇賀』に向って車を走らせる。広く良い道が宇賀渓の入口迄続き、売店脇の駐車場に車を置いて歩き始める。店の間を抜けて奥に進み、北河内橋を渡ると植林と渓流の間を行く林道歩きとなる。テント村へ渡る青い橋を過ぎ、木の間越しに川の音を聞きながら、湿気の多い地道を歩くうちに林道が終り、その脇に立つ『裏道登山道入口』の標識を見て、右に付いた山道へ入る。植林下の道は最初からかなりの急登で、小岩も多く歩きにくい。右手に深い谷を見て歩き、遠足尾根に向う分岐を過ぎると、左に寄って山腹道となり、少しずつ谷へ近づいて行くが、道幅が狭いうえにガレや急崖が多く、崩壊した路面に渡した丸太橋もあって慎重に歩くうちに、ホタガ谷と出合い谷沿いの道となる。丸太橋を踏んで渡渉を繰返した後、作業小屋(避難小屋)の先から谷を離れて急登し、再び谷へ出て渡渉して植林に入り、高巻から徐々に谷へ降って『分れ滝』と名のある幾条にも水流が白く光る滝を眺め、その先でナメ滝や小滝を見ながら沢に出て、丸太橋や転石を踏んで遡行して行く。やがて道脇に笹が現われ、杉林がコナラ等の細い広葉樹に変るうちに、樹林が途切れて周囲が明るい笹原の溝道になる。笹原の奥には笹に埋もれた山肌と稜線が、屏風の様に立並んで視野を塞いでいる。傾斜のきつい岩の多い溝道を登りきると、右手から延びてきた遠足尾根との分岐に出る。一息入れた後左折し山頂へ向うと、暫く笹の間の踏み跡を急登してクラと呼ばれるピークに着く。振返ると藤原岳と御池岳が大きく迫り、前方には目指す竜ヶ岳の山頂が、笹の衣を纏って緩やかな稜線を横たえている。平坦になった広く良い道の両側には、アセビが目立つ低い潅木が立並んでくる。木立を潜り抜ける様に進むと、道標の立つ県境縦走路の分岐に出る。その先には立木のない笹原の中に、蛇行し踏み跡が、山頂迄一本道で続く様子が一望出来る。のどかな散策気分で、左右に落込んだ稜線や谷間を眺めながら、緩い傾斜道を登りきると明るく開放的な山頂に着く。頂上は笹を丸く切開いた空地があり、二本柱の大きな標識が立っている。笹の頭上越しには、四周へ展望が開き雄大な景観が拡がっている。
山頂から南の石樽峠へ降る道と、東のヨコ谷へ向う中道があり、何れをとっても宇賀渓に戻る事が出来るが、来た道を戻るのが時間的には一番早い。但し遠足尾根から谷に出合う間の岩道の降りと、幾度も現われる丸太橋の渡渉には、疲れの出る帰路は、躓き易く滑り易いので特に注意する。