[2]阿蘇谷道(往復)

4 三国岳

人の歴史と生活を偲ぶ道

三国岳最高点峰(鞍掛峠尾根より)
歩行時間 4:00  
総時間 6:00  
山行調査日10/11/14
難易 B  安全 B  体力 C  展望 B
地形図  篠立     
問合先  上石津町役場
留意点 ワサビ田・炭焼小屋等見所が多い展望は不良。夏期は
      山ビルが多い 鈴ヶ岳・御池谷は踏み
上石津町の国道365号から、時山の集落に向って牧田川沿いを5キロ程走ると、時山バンガロ村へ渡る赤い橋の、もう一つ先の目立たない白い橋が三国岳の登山口である。この街道筋では、烏帽子岳が際立った存在で、三国岳はその奥に隠れて殆ど姿を現さないが、時山の人にとって、三国岳に向かう阿蘇谷沿いの山道は、烏帽子岳より遥かに重要で生活に密着した山域であり、今もそれらを偲ぶよすがか、道の端々に残されている。橋脇の空地に車を置き、橋を渡って簡易舗装路を左折してすぐ右折して山道へ入る。脇の小さな墓地を過ぎ、右手が良く手入れされた植林の、林道の様な広く良い道を歩くうちに、左手の谷が近ずき、鉄の橋を渡って左へ移ると、沢横の狭い空地に、屋根と柱だけの小屋と石積みの小穴がある。死者を火葬して野辺送りをした場所とのことで、何時頃迄続いていたのであろうか。沢沿いの次第に細くなる小道を遡行していくと、古い窯跡を幾つか過ぎた後、現在も使用中の炭焼小屋に出る。煙こそ上がっていないが、入口には切揃えた間伐材が積上げてある。その後直進する巡視路と別れて沢を渡ると、右手にワサビ田が現われる。
道沿いの傾斜地に、石段で囲った田畑が、両側から沢の清流を引き、かなりの長さで続いている。道脇に張った有刺鉄線から、垣間見える薄緑色の葉が、くすんだ自然の中で新鮮な感じである。ワサビ田を過ぎた所で、道が大きく崩壊して通れない場所がある。左から山腹を巻き、再び沢沿いを渡渉や転石歩きを繰返した後、道標を見て沢を離れて右に出ると、二次林に覆われた広い窪地に出る。『ダイラ』と呼ばれる雰囲気の良い所で、下草もなく休憩に格好の場所である。周辺には窯跡が点在し、少し西へV字状の谷間を歩くと、昔マンガン鉱を掘削した鉱穴や、トロッコ道跡がかすかに残っている。但し今は見るべき遺構も無く迷い易いので、この周辺が『昔大勢の作業者で賑った場所』程度に記憶して眺めるだけにしておく。ダイラで一息入れた後三角点に向かう。テープを目印に南東へ進むと、すぐに沢に戻って渡渉した後、沢を離れて山腹の急登になる。道はジグザグしながら高度を上げるが、巡視路なので木の階段があって解り易い。やがて道が大きく曲ると、五僧峠から来る県境稜線に出る。左折して縦走路の緩い登りを辿ると、尾根に出る分岐がある。右に登って山腹を少し藪漕ぎすると、尾根から展望の良い鉄塔下に出るが、巡視路が左の山腹を巻いていて、こちらの方が早くて歩き易い。巻道から尾根に出ると、木立の間から烏帽子岳が頭を出し、目指す三国岳も見えてくる。大君ヶ畑に降る分岐を過ぎた後、すぐに三角点に向う分岐に出る。右に戻る様にヤセ尾根を登ると、5分程で三角点に着く。山頂の展望は少ないが、三国岳の双耳峰が好アングルで開けている。稜線迄戻り鞍部から三国岳への急登となる。頂上迄はっきりした踏み跡が続き、右手には桧の若木が立並んでいる。左手は細い灌木帯で、木の枝を掴んで急登すると、烏帽子岳の分岐を過ぎてすぐに三国岳山頂となる。こちらも木立で展望は優れないが、南に鈴ヶ岳か天狗堂の一画が開けている。更に南へ最高点峰に向う踏み跡が続くが、来た道を戻って帰路につく。余談になるが阿蘇谷は山ヒルが格別多いので四月から十月の山歩きを避ければ無難である。