[1]カネツリ谷道

2 烏帽子岳 865m(上石津町)

盗賊伝説で知られる秀峰

烏帽子岳(狗留孫岳東県境尾根より)
歩行時間  2:45 
総時間  4:00 
山行調査日 10/4/19
難易 C  安全 C  体力 B  展望 C
地形図 篠立  
問合先 上石津町役場
留意点 展望は物見台以外は殆どない。 登山口近くの山腹
     の急崖に注意。   
関ヶ原町と藤原町を結ぶ国道365号から、県境近くの上石津町に入るとすぐに西に折れ、時から時山の集落へと走るうちに、家並みが途切れて田畑が拡がってくると同時に、南に屏風の様に立塞がる堂々とした山容の烏帽子岳が見えてくる。鈴鹿山地の北端にあって、霊仙岳や御池岳の名声の陰で、あまりハイカーにも歩かれない山であるが、山の北麓を通る街道は、昔は近江と美濃や伊勢を結ぶ交通の要衝路として栄え、旅人達が険隘カルスト台地の山道を越えて、ようやく穏やかな平野に出て、ホッとして仰ぎ見た山であろうが一方では『熊坂長範』と言う盗賊が根城にした山との伝説も残っていて、当時の烏帽子岳は、現在では計り知れない程に、全国に名の知れた山だったのであろう。
幾通りかある烏帽子岳の登山道の中で、基本コースとされるのが、時山橋の脇からカネツリ谷を登る道で、国道から5キロ程走り、時山橋を渡ったすぐ先の『水資源開発公団』の建物の前の空地に車を置いて歩き始める。登山道の入口はゲートの付いた林道のすぐ右手で、小さな標識を見て山道へ入ると、始めからかなりの急登で、ジグザグとした小石の多い道は、左手の谷側が急崖となって落込んでいるので慎重に歩くうちに、降りに転じると程なくカネツリ谷に出る。谷に沿った道を1つ滝を過ぎ2つ目の滝の前で渡渉して左へ移ると、また谷が現われ、それもすぐに離れて踏み跡の不明瞭な岩の多い足場の悪い道となる。テープを確かめながら踏み跡を探して高所へ登り、再び左へ降って谷に出る。その後3度渡渉して谷の左へ出た所が最後の水場で、ここから谷を離れて植林下の山道となる。杉や桧の薄暗い道を少し登るとすぐに平坦になり歩きやすくなるが、それも束の間で、右や左に深く切落ちた山腹道と変り、幾度ガレ脇の細い踏み跡が続いて緊張するが、再び植林下の安全な道となり、今度はジグザグの急登で汗をかく。中腹に来て大きな岩を左に回り込むと、周囲は植林から二次林に変って良い雰囲気になるが、すぐ又植林に変り、ここを登りきるとようやく明るい尾根道に出る。尾根をすぐ左に寄道すると、岩峰のある突端に出て、このコースで唯一の、雄大な展望が北東方向に開けている。ここが『物見岩』と呼ばれる所で、遠く霊仙山から東へ養老山系が続き、眼下には牧田川沿いに幾つかの集落が俯瞰出来て、往時の盗賊伝説を彷彿とさせてくれる。物見岩から頂上に向かうと、急に樹相が変って、背の低い二次林の雑木林になる。4月には足元にカタクリが花を開き、5月にはシャクナゲが樹間に花を付ける。そんな樹林のトンネルを一登りすると、三角点のある頂上に着くが、木立が茂って展望は優れない。更に西へ笹と潅木の踏み跡を辿ると、5分程で最高点の峰に着く。こちらも樹林が密生して展望を塞いでいる。最高点から更に西へ県境稜線を歩くと、三国岳に向かう縦走路が延び、南方向にはクルソン岳に向かう尾根道が続いているが、何れも山慣れた人向きのコースである。
帰路は来た道を忠実に戻る。降りの道は、登りで不明瞭だった沢筋の踏み跡や分岐も、降り一方の道をとれば迷うことなく下山出来る。総時間でも4時間程の往復で、変化があって面白いコースである。