[1]稲ヶ谷道クラ谷 (武平峠)

90 雨乞岳(永源寺町) 1238m

東雨乞 1226m
 七人山 1073m

冠雪の雨乞岳(水晶岳より)
歩行時間  4:50
総時間  8:30
山行調査日 10/4/8
難易 C  安全  C  体力  C  展望  A
地形図  御在所・伊船
問合先  土山町役場
留意点  山頂部の笹は霊仙山より深く暗い。七人山の二次
      林は好雰囲気。

雨乞岳は御池岳に次いで鈴鹿山地第二の高峰であるが、鈴鹿山脈中部の御在所岳や鎌ヶ岳の西方に隠れて、三重県側から見ることは出来ない。しかし鈴鹿山地や南の布引山地にかけて、展望のきくどの山からでも、両翼を拡げる様に支峰を連ねた雨乞岳の、どっしりと構えた巨大な山塊を見ることが出来る。昔は名の通り雨乞が盛んに行われた信仰の山も、今では茫洋とした笹原ばかりでその面影はない。登山道も広い山域の山だけに、数多く拓かれていて、人里から直登すると、東西いずれからでも山深く長丁場を強いられるが、幸いに鈴鹿スカイラインが南麓を巻く様に走っているので、車を利用すると楽に日帰り出来るコースがある。中でも稲ヶ谷から武平峠への周回は、時間的に最も効率的なコースといえよう。但し下山口から登山口へ車道を歩くと、1時間近くかかるので、両方に車を置いて送迎出来れば便利である。鈴鹿スカイラインに入り、県境の武平トンネルから西へ10分程の所に、『稲ヶ谷登山口』がある。道が大きく曲がる脇に、橋と道標と小広い空地があってそれと解る。車を置いて北に向って山道に入り、すぐに沢を渡って流れの右に出ると、岩壁をヘツるような険しい歩きとなる。その後幾度か渡渉するうちに、左の山腹に登って滝を高巻く道となる。周辺はイワカガミの群生で開花期(4)は赤く白く彩られるが、固定ロープや木の根を掴んで息の切れる急登が続く。巻道を登り切った後、平坦な植林に出てすぐまた降って谷道となる。その後幾度となく転石を踏んで渡渉を繰り返しながら、赤いテープの付いた踏み跡を遡行していく。沢自体が幾度も枝分れや合流があって複雑な流れを見せるが、雑木林に囲まれた谷の雰囲気は悪くない。やがて稜線の尾根が見え始めると沢が消えて笹の急登道となる。途中で踏み跡の不明瞭な所もあるが、高所へ向ううちに踏み跡が現れ、笹のトンネルを抜けると稜線に飛び出す。
山頂部は霊仙山や竜ヶ岳と同様に、遠望のきく笹原に幾つかの峰が盛り上がり波打っている。西の雨乞岳に向う笹に埋もれた道は、よく踏まれていて解りやすいが、所々に岩があるので、足元に注意しながら歩くうちに頂上に着く。山頂には立派な標識と、すぐ近くに「大峠の沢』と名のある小池がある。展望も鎌ヶ岳を中心に南半分が大きく開けている。更に西の切開きから南雨乞へ道が続くが寄らずに帰路につく。笹の波間を泳ぎながら分岐迄戻り、更に東へ緩く登ると、笹も木立もない裸地の東雨乞頂上に着く。展望は雨乞本峰より更に雄大に、四周遮るものなく開け、御在所岳と鎌ヶ岳そして雨乞岳からイブネに続く西北の稜線がとりわけ間近かである。
北から降ってクラ谷へ向う。背の高い笹の溝道は、やがて雑木林に変り七人山コルに着く。谷へ降る前に、踏み跡は薄いが歩き易い二次林の斜面を登り七人山を往復する。自然の息吹を感じさせる良い雰囲気の山である。分岐を左折するとすぐにクラ谷に出て渡渉の繰り返しとなるが、両岸を二次林に囲まれた明るい谷道は、一転して崖に沿った山腹の急登道と変り、再び谷を変えて渡渉し細い山腹を抜けると漸く植林道となり、程なく武平峠の分岐に出る。戻る様に右に折れて降った所が、武平トンネル西の駐車場である。