清涼感満喫の谷歩き

89 愛知川遡行

(白滝谷出合~タケ谷出合)

岩をヘツり淵を横切る
歩行時間  6:40
総時間  8:40
山行調査日 10/8/29
難易 C  安全  C  体力  D  展望  D
地形図  御在所山
問合先  永源寺・菰野
留意点  表示時間は白滝谷~下水晶谷。白滝谷~ヒロ沢
      なら時間短縮で楽。

登山道の道筋の一つに谷道がある。人里近くから山頂に向って、谷の流れに沿って遡行する歩き方であるが、夏の一時期、谷の遡行だけを目的として歩く楽しみ方がある。源流を発した沢の流れは、長い歳月をかけて、岩壁・淵・瀞・滝・廊下等と称される渓谷を山合に造り、岸辺を彩る植生と共に、雄大な自然美を生み出している。自然美溢れる渓谷を、登山靴を渓流シューズに履き変え清流に足を浸しながらの遡行は、山道歩きと一味違った清涼感・爽快感のあるハイキングである。鈴鹿山地にも、夏の遡行に適した渓谷は数多いが、中でも愛知川が神崎川と呼ばれる永源寺町(杠葉尾)から、鈴鹿山脈に沿って御在所岳方向へ遡る上流で、白滝谷出合からタケ谷出合の間は、三重県側から入って容易に日帰りが可能で、加えてルートが多く、時間の調整が自由に出来るので人気の高いコースとなっている。
朝明から羽鳥峰峠へ出た後、右折して少し稜線を歩き、道標のある分岐から、左折して白滝谷道へ向う。背の高い笹と二次林の茂った谷沿いの道を降るうちに、広い河原に白い石を敷き詰めた白滝谷出合に着く。歩き始めて2時間程である。身支度を調え、南に向って遡行を始めると、すぐに深い淵に突き当たって行く手を阻まれる。この様に歩いて進めない淵が、タケ谷出合迄に5か所程ある。完全遡行する場合は、水着や浮環を持参して泳いででも進むが、一般のハイキングでは精々腰迄浸る程度で、深い淵は巻道へ出て先へ進み、淵を過ぎると又川へ降って浅瀬を歩く。2番目の淵の端に、高さはないが堂々と水を落す天狗滝が現われる。滝の手前から再び巻道へ出るが、傾斜のきつい岩壁を登るので、足元に十分注意する。滝を過ぎて川へ降りた後、大きな淵(七条淵)の手前で、3度目の巻道へ登り、高巻道から降りた所がヒロ沢出合となるが、ここ迄の間が愛知川の核心部といわれ、最も渓谷美の集中した所である。従って遡行にも時間がかかるので、遅くなれば遡行を切上げて、ヒロ沢道から朝明へ戻る事が可能である。
白滝谷出合と同様に、白い石を敷き詰めたヒロ沢出合から上流に向うと、急に広く深い淵が減って、歩きやすい瀬が多くなる。河原の広さと比べ水流は細くなるが、散乱する岩に阻まれて、水に浸ったり岩を乗り越したり、ルート選びに時間がかかる。やがて岩の絶壁に囲まれた長い廊下状の大瀞に着く。さすがにここは歩いて進めないので、右手の岩場から溝を登って巻道へ出る。白滝谷から遡行を始めた時は、大方は時間が限度となるので、巻道をそのまま歩き、少し先に掛かる赤い橋(大瀞橋)を渡って、下水晶谷に沿った道を辿って中峠から朝明に戻る。
遡行をヒロ沢出合から始めた時は、その先も歩けるので、大瀞の先から再び川へ降りる。もう一度やや深い淵があり、水際の岩をヘツるか、又は左手の巻道を利用して越えると、その後は徐々に水面が高くなり、川の両岸と周囲の雑木林が平坦に接続する様になる。程なく左手の岩に赤ペンキで『根の平峠』と書かれた目印が現われ、タケ谷の出合となって遡行が終了する。川を離れて山道へ入り、よく踏まれた溝道や涸れ沢道を登って根の平峠へ着いた後、岩の多い道と荒れた林道を降ると朝明に着く(朝明~県境は『水晶岳』参照)