国道307号を八日市から北へ走ると、永源寺町へ向う交差点を過ぎた辺りから、東に大きな山塊が現われてくる。道が愛知川を渡って愛東町に入ると、すぐに遠ざかってしまうが、幾つもの送電線や鉄塔を乗せた山並が、左から白鹿背山・明神山そして高野山である。山塊の東には日本コバがあり、これらの山々が、丁度日本コバの前衛峰或は城壁を思わせる存在であるが、湖東平野の人里に近いだけに、古くから信仰によって結び付いた里山でもある。麓から眺めると、これらの三山は尾根通して楽に歩けそうな感じもするが、意外に藪が深くて難渋するので、今回は夏草の茂る頃でも歩ける明神山と白鹿背山の二山を巡視路を利用しながら辿ってみた。
永源寺町役場東の信号交差点を北に折れて、愛知川に掛かる赤い欄干の紅葉橋を渡ってすぐに左折する。川沿いに2キロ程走り、愛東町の標示を過ぎた先のT字路を右折し、細い農道を左折した所の広い空地に車を置いて歩き始める。登山口は空地の脇の石仏の並んだ所で、山に向って広い参道がある。簡易舗装路からすぐに地道に変る道を緩く登ると、鉄塔を過ぎた辺りから山道となる。
広い溝道が次第に細くなり、雑草が道を覆ってくる。周囲は松や杉の間に雑木が混じり、雑然とし樹相が続いている。踏み跡を辿るうちに正面にフェンスで囲った反射板が現われ、その右を薮漕ぎしながら登ると、カヤトの茂る明るい草原台地に出る。周囲の展望が拡がり北方には黒々とした明神山と、深い鞍部の右に高野山が聳えている。台地から明神山へ向い、平坦な踏み跡が雑木林の急登に変ると程なく山頂部となる。傍に鳥居が立ち、鎮守の森そのままに、年輪を経た松や杉の木立が密生する脇を更に登ると、尾根頭の明神山山頂に着く。展望はきかないが、小振の立派な神社と石積の祠が、神聖な雰囲気を漂わせている。
明神山から尾根の稜線を辿り白鹿背山に向う。雑木や夏草で暫く藪漕ぎが続くが、ピークに出ると歩き易い巡視路となる。傾斜道には階段を付けて、歩き易く整備された道を、幾度かアップダウンするうちに鉄塔の切開きに着く。送電線の間から四周に大展望が拡がり、大休憩に良い場所である。道はその後送電線に沿って一旦降り、登り返して北から西に向きを変え、鉄塔を二つ過ぎた後分岐から巡視路を少し離れて白鹿背山に着く。二等三角点のある山頂は木立で展望はないが、脇の『展望台』の標示に沿って西に少し降ると、7分程で尾根の先端にある展望台に着く。愛東町が整備した立派な視界図と共に、湖東平野から霞に消える琵琶湖迄、大展望が一望出来るが、草木の茂る季節は視野が狭くなる。帰路は展望台の標示迄戻り、その脇を右折して薮を分けると、すぐに左から来た巡視路と合流して右へ降る。この辺りから鉄塔を二つ過ぎる迄、木に付けた貼り紙が幾度も出てくる。見ると『入山禁止』とある。この付近は赤松が多く松茸山の様である。頭上には送電線が幾重にも行交い、巡視路も技別れしていて複雑に分岐が出てくるが、総て左をとって降るうちに林道へ出る。この後送電線の基地(東近江開閉所)の前で左折し、基地の入口前で砂利道に入って遊歩道を歩き、基地を回り込んだ所で車道に出て、田畑の道を歩いて駐車場へ戻る。