木地師の里から登る鈴鹿北部の名山

76 天狗堂 988m(永源寺町)

御池岳展望台の山

富士形の見事な天狗堂

歩行時間  3:40
総時間  5:00
山行調査日 10/8/11
難易 C  安全  B  体力  B  展望  A
地形図  竜ヶ岳
問合先  永源寺町役場
留意点  山頂下の急登降と薄い踏み跡に注意。展望の楽
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御池岳(ボタンプチ)や藤原岳(展望丘)から西を眺めると、重として幾重にも連なる鈴鹿山地の中程に、一際目立つ富士形の鋭峰が見える。山の名を天狗堂と言い、名山鎌ヶ岳に似た山容と鈴鹿北部山域を一望出来る一級の展望、とりわけ『空母の様な』と形容される御池岳の景観は、それを見るだけでも登る価値のある、そんな山である。天狗堂の登山口の一つが君ヶ畑にある。君ヶ畑と言っても、通過する道もなく、人里遠く離れた山中の集落で知る人も少ないが、八日市から八風街道を山手に向い、永久源寺ダムを過ぎた中畑から、左折して御池川沿いに7キロ程走ると君ヶ畑に着く。植林の続く山裾の細い道を行くと、急に大きな集落が現われて驚くが、数十軒の人家に混じって、洋風の建物や寺や神社もある。昔栄えた木地師の里の一つで、良質の木材を求めて、こんな山奥迄入り込み住み続けているのだろうか。
集落奥の人気のない学校前の駐車場に車を置いて歩き始める。少し戻りバス停の広場を過ぎた所の二股道を右に入り、直進すると器地祖神社の前に出る。石段を登り鳥居の右手にあるNHKの注意板の脇が登山口である。道はすぐに尾根沿いとなり、明瞭な踏み跡がかなりの傾斜で上に向っている。所々に『NHKケーブル埋設』と書かれ白い杭が道脇に埋められ、黒いケーブルが地上を遣っている。これを目安に登っていくと、植林の中にやがて二次林が混じり、ブナの木が目立ってくると程なく、天狗堂に向って直登する尾根のT字路分岐に着く。支尾根から出た分岐が稜線ピーク地点で、右折して鞍部に向う降りとなる。植林に囲まれた道は、薄暗いがしっかりした踏み跡で歩き易いが、鞍部から次のピークに登りはじめると、潅木が茂って道を覆い、踏み跡を探しながらの藪漕ぎとなる(雨の後等は晴れていても雨具を着装しないとずぶ濡れになる)道は次第に細い尾根沿いとなるが、尾根上から随所で尾根下の巻道に出るので、足元の草に隠れた踏み跡を確かめながら歩く。北側の谷間越しには、立枯れの葉のない針葉樹が目立つ様になり、展望も開けてくるが、犬上川源流の山合に塞がれて遠望はきかない。次のピークに出ると平坦な尾根沿いとなり、正面に天狗堂の山頂部が頭を出し、南側の展望も右手に開けてくる。送電線を乗せた尾根の上から鈴鹿山脈の主峰が垣間見えてくると程なく、尾根道から二次林が茂る山腹の急登となる。山腹に入ると、次々と現われる大岩に遮られて踏み跡が不明瞭となる。北東に方位を定めて、木に付いたテープも目印に、歩き易い所を選んで高所へ向い、岩の左右から、木を掴んで息を切らして登りきると、ようやく平坦な山頂部に着き、更に岩を避けながら北へ尾根を少し歩くと、大岩のある山頂に着く。西は深い樹林に閉ざされているが、山頂を占める大岩の上に立つと、東方に御池岳から南へ大展望が拡がり、いかにも鈴鹿山地の最奥部にいることを感じさせる景観が続いている。但し岩の上から滑落しない様に多人数の時は要注意。
帰路は来た道を戻る。往路の急登が急降下に変り、岩脇の道は砂質で滑り易いので、往路以上に慎重に降り、尾根道に出ると後は踏み跡を辿って一本道である。総じて言えば大雪や盛夏の候は避け、早春や初冬の頃が歩き易い。それに展望のきく天候の良い日を選んで山行したい。