霊仙山南麓の芹川から犬上川の間に拡がる『脇ヶ畑カルスト台地』については、高室山や鍋尻山の頭でも触れたが、鍋尻山の西方には、知名度は低いが高度の似た山が群立していて、保月の西の集落杉(廃村)から、四山を楽に周回出来るコースがある。高室山の山頂に立つと、四山の位置や様子が良く解るが、ヒヨノ・杉坂山・アミダ峰そして向山である。山頂の展望は何れも優れないが杉坂山近くの鉄塔下から雄大な展望が拡がり、近江高天原説の杉坂山や、古城が伝承されるアミダ峰、そして杉坂峠の大杉等、歴史の雰囲気が漂う山の探訪もまた楽しい。
国道306号の多賀大社口少し北から、河内風穴に向って県道に入り、栗栖の集落から白い橋を渡って細い舗装路へ入る。高度を上げながら杉坂峠に出て、少し降ると杉の集落(廃村)に着く。山間に開けた盆地状の集落で、傍の空地に駐車し歩き始める(大君ヶ畑方面から権現谷林道を走っても行ける)車道を西へ歩くと、左手の植林中に、明瞭な細道が出るので左折して山道へ入る。
前方に送電線が通り、道が右に出る手前である。少し行くとY字路に出て、右側の登り道をとる。植林と山腹の二次林の境を20分程歩き、道が左大きく回り込む手前から、右手の植林に入って山腹を登り始める。道標も踏み跡も無いので解りにくいが、道が植林の中の登りになったら、行過なので戻ればよい。山腹を西に向って高所へ向い、登りきるとヒヨノの三角点に着く。木立で展望の無い山頂から、北の尾根に沿って杉坂山へ向う。少し藪漕ぎの後、植林下の尾根の急降下となり、鞍部の先で右から来る踏み跡の分岐に出て、そのまま直進して桧の若木の間を抜けると、このコース唯一の大展望が拡がる鉄塔切開きへ出る。霊仙山から鍋尻山が北に聳え、その下に杉の集落が垣間見えるが、高室山方向は目の前のヒヨノで隠れている。展望を楽しんだ後鉄塔上のピークに出て、一度降って登り返すと、杉坂山の山頂となる。石灰岩が散在して、カルスト台地の雰囲気を伝える杉坂山から、植林下を北へ急降下すると車道に出る。歩く方向が逆になるが、すぐ近くの杉坂峠に立寄ってみたい。傍に『多賀神木/杉坂の御神木』の標識が掛けられ、道のすぐ下に、上で幹が別れた杉の巨木が鬱蒼と繁っている。
杉坂峠から東へ車道を降ってアミダ峰に向う。入口は道標も踏み跡も無いので、送電線が通り道が右へ曲る手前を目印にして、左の山腹へ入り送電線方向に登る。台地へ出ると、正面に赤い鉄塔が谷を挟んで見えるが、谷へ降らずに台地に沿って左へ回り込み、尾根に出て北に沿って歩くと、左から登ってくる踏み跡に合流してアミダ峰に着く。杉の古木の根元に、小さな石仏が祀ってあるが、古城らしき遺構は見当らない。山頂から尾根を伝うと先程眺めた鉄塔下に出る。巡視路が北に続き展望も少し開けている鉄塔から、尾根に沿って東へ進み、鞍部の峠を二つ越えて、二次林の拡がる尾根から植林に入ると、すぐに向山に着く。若い植林の頭越しに東方の展望が開くが、木立で視野が制限されている。来た道を戻り峠に出て左折し、山腹に挟まれた谷間の踏み跡を降るうちに墓地が現われ、程なく杉の廃屋が見えてくる。