霊仙山の広い山域には、その周辺に衛星峰と言われる幾つかの目立つ山がある。霊仙山の北方で柏原道から北西に延びる尾根上に聳える阿弥陀峰もその一つで、経塚山辺りから俯瞰すると、樹林に覆われた形の良い三角錐を見せている。植林と二次林の山で展望には恵まれないが、山頂下には山名の由来でもある阿弥陀堂跡があって、地元の篤志によって保護管理されている。登山道も幾つかあるが、霊仙山登山口(谷山谷)脇の上丹生浄水場横から尾根取付き、帰路を尾根中程の分岐からイモガ谷林道の終点に降るコースを歩いた。アプローチが短く手頃な時間で歩けるが、明瞭な登山道も道標もなく、所々で読図力が求められるので、山慣れた人向きのコースでもある。
国道21号線のJR醒ヶ井駅前から、南側に折れて醒ヶ井養鱒場に向い、上丹生に入って『霊仙山登山道』の道標が掛かる分岐を左折して、川沿いの細い集落道を抜けると、林道の分岐に出て左へ折れた所に浄水場があり、前の空地に駐車して歩き始める。浄水場の左に接続する広い山道へ入ると、すぐに植林下の急登になり、展望が開いて上丹生の集落が見えてくるとすぐに『野田古墳』標示のある石積の平坦地に出る。右へ回り込んで杣道を高所へ向うと、石灰岩が散乱する岩道に変った後、木立がきれて展望の良い尾根の一端に出る。ここがこのコース最大の展望地で、北西方向に松尾寺山と伊吹山が聳え、その間に琵琶湖の白い湖面が霞んでいる。展望台から先へ出ると、二次林下の岩尾根に薄い踏み跡が続いているが、中程のビークに近づくと、尾根を離れて右へ回り込み、その内に道がはっきりしなくなる。ここは慌てて尾根芯に戻ろうとせずに、右手の谷へ降らない様に進むと、谷の傾斜に沿って左へ回り込んで戻り、平坦な樹林下のピークに着く。この後は東に向って明瞭な尾根と踏み跡が続き、帰路で降る分岐を過ぎて尾根下の広い道を緩く登ると、水の溜るヌタ場と『阿弥陀岳山道』と記した道標の立つ場所に出る。その先で木立がきれて霊仙山が覗く所と、広葉樹の巨木が枝を張る場所を過ぎると、広い草地に赤い二連の灯明塔と卒塔婆が立ちその後ろに琵琶湖形と言われる岩と、周辺に茗荷が植生する一画がある。この地が昔霊仙寺が栄えた頃の阿弥陀堂跡とかで、今も地元(枝折)の信者によって祀られている。一息入れて最後の登りに入ると、石灰岩が足元を塞ぎ、細い樹林が密林状に枝を張って歩く場所もないが、隙間を抜ける様に登り詰めると阿弥陀峰に着く。山頂は植林と二次林に囲まれて展望がなく、目安となる三角点も山頂の標示も無いが、その先はどの方向も急な降りとなるのでそれと解る。
帰路は来た道を戻り、阿弥陀堂跡で小憩の後、尾根を降った鞍部から、往路と別れて右手についた分岐から広い道を降る。山腹を西に向う道は、正面の山肌に突当って北に向きを変えていくが、この辺りから踏み跡が薄くなる。テープを目印に薄い道を右手の谷へ入らぬ様に降るうちに、明瞭な堀割道が出てくる。やがて山腹の右手が開けて、水流のない谷(窪地)が現われるので、右折して窪地に降って踏み跡を歩くうちに、浄水場から延びているイモガ谷林道終点の空地に出て、植林下の林道を一歩きして駐車地に着く。尚林道終点迄車で来て、逆コースで往復する方法もある。